えいのうにっき

a-knowの日記です

僕は CREing:ソフトウェアエンジニアにカスタマーサクセスを任せたときに起こるもの、を Autify で実現したいと思っている

この文章で出てくる用語たち:

  • SRE
  • CRE
    • Customer Reliability Engineering / Engineer 。
    • 「CRE」という言葉が使われるときはだいたい後者な気がする。前者を指してこの言葉が使われてるのはあんまり見ないな、という印象がある

僕自身、前職でサーバーモニタリングSaaSに携わっていたこともあって「SRE」については最低限の知識というか、その概念の理解はあるつもり。でも最近目にしたこちらの記事を読んで、ああそうだった、と認識を新たにした表現があった。以下は、この記事の中の「そもそもSREとは何なのか」という問を受けての記述。

いわゆるオペレーション、旧来からあるサーバーオペレーションみたいなのを全部ソフトウェアエンジニアに任せた時に起こるもの、という風に説明されていて、そのオペレーションとか運用業務って日本語で呼ばれてるやつをソフトウェアの問題として捉えるっていうのが本質的にはSREというものを表してるんじゃないかなと今は自分では整理してる感じかな。 - e34fmの#3からSREについての概要を文字起こししてみた

これを目にして、元同僚であり尊敬すべきエンジニアである id:y_uuki が以前に話していたことも一緒に思い出された。えぇと、たしか「ウェブオペレーションは技芸であるが、それを科学として昇華したものが SRE(ing)だと思っている」といったようなニュアンスだったっけ......と思うと同時に、きっと彼のことだから public なところに書いてあるはず、と、思いつくいくつかのキーワードで検索してみたところ、ビンゴだった。

SREの登場により、技芸(Art)から工学(Engineering)へと移り変わる兆しがみえてきたように思う。(中略) 最初は、工学ではなく科学と書いていたが、科学は文献によっては理学のみを指すこともあるようなので、工学とした。 SREのEはEngineeringなので、工学なのは当たり前なのだが、これまではエンジニアリングといいつつも、技芸やテクニックのみになりがちであったように思う。 とはいっても、技芸が不要ということではなく、これからは、工学と技芸の両輪で回していくことになると考えている。 / 2019年SRE考 - ゆううきブログ

最近になって「CRE」というキーワードを目にすることが増えてきた。自分が「CRE」を名乗り始めた当時は、観測範囲内では他には Google が提唱していたのを見つけられたくらいだったので(余談だけど、このとき Google の中の人に繋いで頂いて「CREという名称を我が社でも使おうと思うんですがいいでしょうか...」と質問したことを思い出した)、感慨深いものがある。「CRE」を名乗っている間はほぼずっと、「CREとは何なのか?」を常に自問自答し続けてきたから、なおさらだ。

「SREing」のターゲットである「Site」とは異なる特徴のうちのひとつに、「Customer」は、その企業やプロダクトによって様々であり千差万別である、ということがあると思う。ただ妙に似ているなと感じるところもあって(おなじく id:y_uuki の「高度に発達したシステムの異常は神の怒りと見分けがつかない」なんていう名言?なんかはそれだ)、それもまた「CREingとは何か」を難しくしているのだと思うのだけれど。

皮肉なもので、「CRE」から離れたこと・離れると決めたことで強く実感したのが、このエントリのタイトルに書いたようなことだ。SREing における「ウェブオペレーション」に相当するものは、CREingならば「カスタマーサクセス」なんじゃないか、と思うのだ。それが過ぎて、「離れなきゃいけない」とすら思った、かもしれない。

カスタマーサクセスが科学や工学ではない、という意味ではない。ただ、自分の見ている先にぼんやりと見えている気がする CREing というものがあって、それを目指すにあたって欠かせないファクターこそがカスタマーサクセスであると信じている......そんなかんじ。

今年の3月に Autify に転職し、Customer Reliability Engineer という名前の職からカスタマーサクセスエンジニアという名前の職を選んだ。でもその決断の後押しになったのは、変わらず CREing を追い求めたいという気持ちがあるからだ、とも言える。

Autify というプロダクトもやはりエンジニアリングプロダクトであり、そんなプロダクトを提供する Autify という組織に所属する人も、多くがエンジニアリングのバックグラウンドを持つ人たちだ。プロダクトの正式ローンチ前から「カスタマーサクセス」を冠する職種が擁されてもいた。CREing の実現を目指す土壌は揃っている。

と、なんだかカッコいいことばかり書いてしまった気がするけど、とはいえ現時点では、同じくカスタマーサクセスエンジニアである同僚と一緒に、手探りで泥臭いこともまだまだ多くやっている。いや本当に。ただ、いままさに日々身についているという実感のあるこの「技芸」を、いつの日か「科学」「工学」に昇華したいとも思っている。