いま僕は、「新卒受け入れ研修の内容を考える」ということを主な業務のひとつとして取り組んでいる。
こんどの4月、いま僕が所属している会社に、新卒のエンジニアが入社してくる。なにぶん今年はその人数、5人。そして来年以降もこれくらいの採用人数は継続して保っていきたい、とのことなので、ここらでがっつり、受け入れまわりのことを考えておいたほうがいいと思って(去年までは 0〜2人 / 年 だった)。今回はぼくみたいなおっさんがでしゃばるけど、来年以降は若手中心で回せるような・それができるよねっていう雰囲気に持っていくことも見据えつつ。
新卒社員の受け入れ教育の一通りを考える、というのは、今までにやったことのない経験。とはいえ、ぼくの社会人経験も11年目を迎えようとしている中で、「こんなかんじで教えていけばいいんじゃないかなぁ」というものも自分の中に無くもなく。なので今は、「受け入れ時、自分はこのように受け入れていこうと思っています」というのを随時、会社の Qiita:Team や slack などに垂れ流し、できるだけ多くの他の人の「私はこう思う」というフィードバックを頻繁に受けようとしながら、そのカリキュラムの策定にもがいている、というかんじ。なにせ、5人の有望なエンジニアのキャリアを左右しかねないことなので、それがぼくの独りよがりのものになってしまうのが、なによりも怖い。
そうして受けられたフィードバックのうちのいくつかに、「育成ということを考えるなら、『アプレンティスシップ・パターン』という本は外せない気がする。」というものがあった。この本、読んだことはなかったし、タイトルを聞いても、どのような本であるかの想像すらできなかった。会社の蔵書にある、ということだったので、早速読んでみた。今はほんと、研修の質を少しでも高める可能性のあるものなら、どんなものでも参考にしたい、という気分なので。
アプレンティスシップ・パターン ―徒弟制度に学ぶ熟練技術者の技と心得 (THEORY/IN/PRACTICE)
- 作者: Dave H. Hoover,Adewale Oshineye,柴田芳樹
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2010/07/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 12人 クリック: 221回
- この商品を含むブログ (53件) を見る
アプレンティス、とは「徒弟」のことで、アプレンティスシップとは「徒弟制度」、中世ヨーロッパのギルド(職人の組合)で用いられていた職人養成制度のこと。この本は、その制度をモデルとして「ソフトウェア熟練職人」を目指すための心がけ、習慣などをパターン化したもの、だった。
で、読んでみて、だけど、非常に良書だなと感じた。そう良書、良書なんだけど、今回は「新卒受け入れについて考える一環として」読んだわけで、その点では、ちょっと違うかもしれない、とも思った。
「初学者に対して物事を教える側のための本」、というよりは、「初学者〜2,3年目、くらいの人を支える・後押しする本」という感じがして。この業界で働きながらも、感じているのがワクワクよりも不安の方が大きい人が、自分から、道標を求めて手にする本、というか。僕みたいなやつが 7,8年掛けて自分の中に築き上げてきた、技術領域に対する処世術というか心構えというか、そんなかんじのことが書いてある。「自分の中にしかない」と思っていた、仕事として技術と付き合う際の心得(的なもの)が、実は既に一冊の本としてまとまってたんや!的な。メンターがこれを読んで、メンティーと接する時に役立てる、というよりは、メンティーがこれを自ら読んで、自分なりの結論を出す助けにする、という使い方の方がハマりそうな気がする。
なのでこの本は、今度の受け入れ期間中でもそうだし、それ以外の場で、後輩エンジニアが悩んでいたり、迷っていたりしたときに、「こういう考え方があるよ」と差し伸べてあげられるようなもの、かなと思った。なのでやっぱり、良書だと思うんだけどね。
ところで関係ないんだけど、僕はどうも、英語を日本語に翻訳した文章を読むのがどうにもニガテだ(かと言って、英文をそのまま読むのが得意かというとそうでもないんだけど)。今回のこの本も、その点では非常に読みづらい印象を受けた。なので僕は、各節の「解決方法」のところは、最初と最後(もしくは最後から2番目くらいの)段落だけ読むようにして、それでようやくちょうど良いくらいだった。決して万人には勧められない読み方だけど。
関係のないことその2。いま、「受け入れ研修の内容を考えるということを主な業務のひとつとしている」んだけど、手を抜こう(時間を掛けずに済まそう)と思えば多分いくらでも手を抜くことはできて。「あれとこれとそれ、必要だから勉強しといてねー」って、課しちゃうのはたやすいし。でも、「これやっといてねー」で済む、という意味での「効率」は、こと教育においては、追い求め過ぎないほうがいいと思ってるんだよね。うまく言えないんだけど。
とまぁ、最近のぼくはこんなかんじで、業務で書くコードの量は減ってるんだけど、むしろ、コードをばりばり書いてるときと同じくらい熱中できている(熱中の質はもちろん違うけど)のは、きっと、こういうこと↓だから、なんだな。
後輩が成長していくのを見るのは楽しいなぁと思いながら、先輩も僕のことをそうやって見てるんだろうし、後輩もその後輩のことをそうやって見てるんだろうかなぁって思ったりして楽しい。同期や先輩が成長するのを見るのも楽しいか。どこを見ても楽しいってことか。
— Mitsuyuki.Shiiba (@bufferings) 2016, 1月 13
ずいぶんととりとめのない内容になってしまった。。